医学を主体とする健康にまつわる知識を豊かにすることにより、安寧な日常生活の継続を可能にしようとするイアトリズムの考えを持つ人たちのこと。
目次
1【概説】
イアトリストとは、心身の健康を医学的知見によって可能な限り自然に維持・継続することを目的とした知的健康医療概念『イアトリズム』の価値観を有する人々を表す言葉である。
2【イアトリズム】
人種・国籍・年齢・性別などに関わらず日々の健康な生活は全ての人々の欲するところであるが、戦争・飢餓・汚染された環境など、個人のレベルにおいて解消が困難なものを除き、個々における日常の健康は「医学を基礎とする各人の保健にまつわる知的見識の研鑽とそれにより導かれる生活の質(QOL)の向上により得られる」と定義するものがイアトリズムの持つ中心的観念である。よってイアトリズムとは、ある特定の健康法や治療法をさす語彙ではなく健康な状態を会得するための概念そのものを指す言葉なのである。
3【イアトリズムの目的】
当然のことながら一般の多くの人々は健康医学に関する知識をあまり有していない。しかし医療的知識の希薄さと疾病の間には密接な関係があるため、無意識になされる不適切な自身の生活が様々な症状や病気を引き起こす原因となっている場合も多く、イアトリズムは、それを未然に回避することによりその罹患率を大幅に下げることを最大の目的としているのである。
4【イアトリズムの沿革】
1962~70年頃、日本の臨床鍼灸医療の魁(さきがけ)であった浅田亮一は『健康の秘訣は病気にならぬこと』をモットーに「より多くの人に対する医療的知識の教授こそが社会と人々の安寧を生むための礎(いしずえ)である」と提唱、これを1987年頃、その孫にあたる日本の東洋医学研究者、浅田悟が体系化し「イアトリズム」と命名したものである。
5【名前の由来】
ギリシャ語で医学を意味する「IATRO」という言葉と主義・行動・学説などの意味を持たせる接尾辞「-ISM」が合わさって出来た合成語であるイアトリズム(IATRISM)の人称を表す言葉としてイアトリスト(IATRIST)は命名されたものである。
6【東洋医学との関連】
イアトリストの持つ観念は、精神の安定および日常の「食事」「運動」「睡眠」という三つの柱を適切な状態で行うことにより健康な日常を送れるようにしようとするものであり、心身の不具合を「未病」の段階で対処することにより健康の維持が可能になるという点で東洋医学との深い関連性が見いだされる。
a [保健の医学としての東洋医学]
「未病」とは、現代医学にはあまり見られない東洋医学独特の考え方で「身体がだるい」「食欲があまりない」「よく眠れない」などといった身体の変調に早い段階で気づきそれを正常な状態に戻すことにより発病の抑止を可能にしようというものである。それゆえ東洋医学は、病気になってから治すのではなく健康な状態を保つことを可能にする医療として「保健の医学」とも呼ばれている。そしてその治効機序には生体の持つホメオスタシス(恒常性)の機能が大きく関与している。
b [東洋医学とイアトリズムの共通点]
東洋医学は、経穴(ツボ)や経絡(ツボのつながり)に刺激を与え生体のバランスの崩れを正常化することにより治療効果を上げているが、それは外部からの刺激を受けた生体がその刺激により疾病などにより失われていた恒常性の機能を自ら回復させ自己治癒能力を発揮することによりなされるものなのである。すなわち「鍼灸治療」に代表される東洋医学は人体を大自然の一部として捉え、身体に無理のないより自然な方法により本来の状態へと戻す治療法と考えることができる点でイアトリズムとの深い共通点が見出だせる。またそれとともに恒常性の乱れは、イアトリズムの三つの柱である食事・運動・睡眠の不摂生やストレスなどによっても引き起こされるため私たちは自身の日常における暮らしの在り方が健康に大きく影響を及ぼすということをしっかりと自覚しなければならない。
7【実質的内容】
イアトリズムの概念を形作る実質的内容は「イアトリズム憲章」に掲げられる理念に基づき、基礎医学および東洋医学、そして専門科目とその各実践内容など広範囲にわたる科目から構成されている。
a [基礎医学]
基礎医学は、骨や筋肉・内臓・神経など身体の構造を学ぶ「解剖学」、消化や吸収・呼吸・代謝など私たちが生きるためのメカニズムを学ぶ「生理学」、腫瘍や変性・炎症・アレルギーなど疾病の状態・種類などを学ぶ「病理学」、消毒や殺菌・食中毒・感染症などを学ぶ「衛生学」などにより構成される。
b [東洋医学]
東洋医学は、陰陽五行論など東洋医学の考え方を学ぶ「東洋医学概論」、各臓府の働きや気・血・津液の関係性を学ぶ「東洋生理学」、表裏・寒熱・虚実など東洋医学から見た疾病の種類などを学ぶ「東洋病理学」、経穴や経絡など治療に用いるツボの位置や効果を学ぶ「経穴学」などにより構成される。
c [専門科目]
代表的な心理学の療法や用語とその意味を学ぶ「心理」、栄養素や食品群などその種別・役割等を学ぶ「食品」、化粧品の成分やその効果および美容関連用語の意味を学ぶ「美容」、代表的な病院薬・市販薬および漢方薬の効能や成分・副作用・種別などを学ぶ「医薬」、医療機器や美容機器などの作用機序を理解するための物理・化学などの知識を学ぶ「理学」等々により構成される。
d [呼称]
本来はこれらの医学的知識を修得した者を「イアトリスト」と呼称するが、広義の意味においては知識と実践を以て健康を維持しようというイアトリズムの理念を持つ者は全てイアトリストであると考えるべきである。
e [標識]
『IATRISM』の観念を表すマークとして「イアトリズムクロス」があるが、それはIATRISM のアルファベット文字、およびそれを取り囲む4種の幾何学模様によって構成される赤い十字(クロス)により表現されている。赤い色は生命の象徴である血液、および東洋医学における「気」「血」「津液」の総合的観念を表現したものであり、類似する異なった4つの幾何学的図形は、その生命を有する個々の人々が『イアトリズム』の持つ健康概念へと寄り添い集う様子を図式化したものである。また、上下左右においてシンメトリック(対称的)なその形は、医学や医療の万人に対する平等性を示すものであり、その思念が遍く世界に届けられることを強く願う気持ちを顕現化したものであるとされている。
8【活躍の場】
イアトリストの活躍の場としては様々な場面が想定される。まず第一に自身および家族や友人など、自分の周りの人たちの健康に留意することが可能となる。また職業の場においては医療関係はさることながら、美容・飲食・介護・保育・スポーツジム・健康機器、ひいてはペット産業に至るまで幅広く健康にまつわる専門アドバイザーとして各々の仕事に役立てることが可能である。
a [医療関係]
医療関係の仕事に従事するものには、医師・歯科医師・鍼灸師・柔整師・薬剤師・看護師・理学療法士・公認心理師など国家資格を有する者の他、製薬メーカー・医療機器メーカー・ケースワーカーなど、それらを支える仕事をする者も含めその職種は多岐に渡っている。有資格者は各ジャンルにおいて高度な医学的知識を有しているが、その全てを網羅しているわけではない。また関連産業従事者においてはある程度の知識を持つ者もあるが、その知識にはかなり偏りがあるのが現状であり、イアトリズムはそれらを補完する知識としてより幅のある医療人の育成に寄与するものである。
b [美容関連]
美容関係においては、美容師・理容師・エステティシャン・ネイリスト・化粧品メーカー・美容機器メーカー・健康食品販売・サプリメントなど医学的な知識を必要とする職種が多くイアトリズムは、お客様への説明力アップや安全性の確保、商品や使用する商材や機器への理解力アップと適切な使用法の確保などを可能とするものである。
c [学校・施設関連]
学校・施設関連には、保育所・幼稚園・障害者施設・老人介護施設など健康により一層留意すべき人たちが利用するものの他、スポーツクラブや各プロアマスポーツの選手などにいたるまで身体の構造や成り立ちを直接、体力作りや運動に生かせる知識としてイアトリズムは役立てられるものである。
d [飲食産業関連]
飲食産業関連については、レストラン・食品製造・食品販売などの分野において、食材や栄養・消化・吸収にまつわるお客様への説明力アップや知識の教授および感染症予防・食中毒防止など衛生面の徹底にイアトリズムは大きな力を発揮するものである。
e [その他の職種]
その他の職種としては、旅館やホテル・スパ・温泉など人が多く集まる場所の衛生管理、また人間のみならず家族の一員としてのペット関連産業の疾病対策およびペット自身へのイアトリズムなどその適応業務範囲は広範に渡る。
9【資格制度】
医療事故や美容事故、食品偽装、食中毒など身体に危険を及ぼす事案が社会に蔓延する中、人々の間ではイアトリズムの考えに共感し医学的知識に興味を持つ人が増え続けている。その背景には提供者側の傲慢さと消費者の無知さがそのような忌むべき事態を引き起こしていると認識する人が増えたことと消費者の提供者に対する不信感の増大がある。またそれを裏付ける形で社会では安心して様々なサービスを受けることが出来る真のイアトリストを養成することを希望する声が日増しに高まるとともに、それを受ける形でイアトリストを認定資格として制度化する動きが加速している。
a [認定資格試験]
社会におけるイアトリズムの概念基準を総括的に管理運営する組織である一般社団法人「日本東洋医学協会」では、イアトリズムの観念を有し幅の広い知識と見識を兼ね備えた真のイアトリストの育成と輩出を目指し、認定資格試験の実施を予定している。
b [イアトリズム検定]
イアトリズム検定と名称が予定されている認定資格試験は、基礎医学・東洋医学を基軸とした学科試験と専門科目のレポート提出により実施される見通しで、イアトリズム検定一級(マスターイアトリスト)・二級(准マスターイアトリスト)・三級(イアトリスト)および(準)イアトリストの別が示される予定となっている。
c [教材]
現在、作成中。
d [実施方法]
現在、検討中である。